youth

僕が“外に出たい”と思うのは、病的なのかもしれない

余裕のない生活でも

自分の肺に入れる空気は替えたいし

色んな人と出会って話して、精神を保ってきた

だから、どこにでも行ける君が羨ましくて

性懲りもなく零してしまった


用事のない僕は、自宅で留守番を決め込んでいたけど

君は今頃、休日を思うままに過ごしている

そのはずだったのに、何がどうしたのか予定が崩れて

掠め通っている台風くらい大荒れだった


新宿まで出るのに片道1時間、それでも僕は行く

ひとりにしておけないのは、きっと僕のエゴでしかない


文字通り吐き出すように感情が溢れる

「折角出掛けてるのに、貴方のこと考えてしまう自分が嫌なんです」

これを聴くのも、もう何度目だろう

「貴方に言われたことを、そうだなって思って、

 ちゃんと自分で考えもせずに動いてるのも嫌なんです」

僕が渡せるのは、選択肢だけだ

それだって、君の行動を踏まえてしかできない


というか、僕は何のために来たんだろう

疑問は、そのまま口にした


「僕は、君に当たられるために来たの?

 聴くよ、聴くけどさ。

 こうなるのが全部僕のせいなら、僕なんていない方がいいよ」


早く吐ききって欲しい

僕も人間のはずだから、心にも容量がある


「…ご飯、食べたくて呼びました」


何だそりゃ。


僕は、思いきり溜息を吐く

拍子抜けするほど可愛い回答だった


「…何、食べようか」

「…美味しいご飯、食べに行きましょう」


すこし彷徨って、ジビエとチーズのお店に入った

丁度良く生演奏が始まる

雰囲気づくりというよりは

それぞれの席を独立させるような音楽だった

だからか、どの曲も全然分からない


けれど、ご飯は確かに美味しかった


ラフロイグ10年なんて飲んだせいか

君の足取りは若干覚束ない

それでも2軒目にチェーン店のバーに立ち寄った

客層は、さっきと打って変わって

若くて、その若さを謳歌している人たちに見えた


メニューは最近増えつつある

スマホで頼む方式だった


別々に頼んだのに、青いカクテルが2つ運ばれてきた

「ふたりして、青いね」

「青いの好きなんですよ」

色なら、赤って言っていた記憶がある

お酒は、という主語がないだけなのかと思いながら

「そうなんだ。

 ブルーキュラソー買えば、家でも振れるよ」

本職ほどの腕前はないけど、本職に教えてもらったから

おうちバーテンダーくらいはできる

「今度やりましょう」

酔っ払った君は、明日には忘れているかもしれない


ふと思い出したように、また零し始めた


「私は、小説家になりたかったんです。

 そのために勉強したんです。

 いまは全然違う仕事だけど、役に立ってるとは思います。

 でも、書きたいんです。書けないのが嫌なんです」


何度聞いても、切実だなあと感じる

君の言葉には、逆らえないことがある

そういう不思議な力がある気がする


「僕にだって、やりたいことがあるよ。

 障壁ばっかりでできなかった。

 けど、諦められなかった。

 だからいま、ありたい自分になるために頑張ってる。

 時間掛かるかもしれないけど、

 君が思うように生きられるようにしたいよ」

 

僕らがお互いを消えない理由にしているのだって

いまより若かったどこかで

取り戻せなかった何かがあるからだ

時間だけは、もうどうしようもないけれど

これからやるにも、生きてなきゃできっこない


僕には、他でもない君と叶えたい夢があるから

いつか、消えない理由が “生かしあう理由” になればいい


「自分のことしか考えられないから、

 私なんて見捨ててくれていいんですよ…?」

「君は見捨てられたいの?」


返事の代わりに、君は僕の袖をキュッと握った。


— youth —

A recollection with you

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