昨晩のビール2缶も、あっという間だった
美味しいんだからしょうがない
どうせ足りないだろうと持って来たアマレットで
酔いどれて眠りについた
僕は午後用事があったけど、君は1日オフだ
お互いのことに勤(いそ)しむ
誰の邪魔も受けない一人の時間は
大切に守りたい自分そのものだと思う
意識しなければ出来ないことの、ひとつかもしれない
出掛ける直前、「行ってきます」とメッセージして
スマホを仕舞う
そうして、出ようとした瞬間だった
部屋のノブが勢いよく回る
あんまり焦って外から押し開けようとするから
「いるよ!いるいる!!」
と向こう側に声を掛けながら、急いで内側から押して開ける
何事かと思ったら、コップを忘れていないかという話だった
君がいつもの鞄に仕舞ったところまで覚えていたから
僕の部屋には、当然なかったわけだけど
これは棚からぼたもちだとばかりに
お気に入りのワンピースに身を包んだ君としっかりハグする
「離したくなくなるなあ…」
「そうですね」
と昼間からクサい台詞を交わしあって、何とか離れる
君の部屋の前で、別れ際に
「行ってらっしゃい」って、笑って送り出してくれる
玄関まで来てくれたら尚嬉しかったけど
さすがにそれは、望み過ぎだろう
探しものは、やっぱり君の部屋にあった
そこで、ふと思った
コップ、元々あったんじゃないかって
愛らしい君のことだから
僕に行ってきますを言おうとして
慌てて来たんだろうなって
ちょっとくらい自惚れてみてもいいかなあ
君も出掛けるんだよね
気をつけて、行ってくるんだよ
気をつけて、帰ってくるんだよ
そう祈った。
— just before leaving —