Poem

上手に生きようとしても

下手を隠すだけで精一杯で

僕自身が情けないことを

何度思い知らされたかわからない


口に出せなかった言葉も

流せなかった涙も

真っ直ぐ見れなかった誰かの顔も


後悔と片付けてしまえるのは、やるせなかった


前触れなく訪れる偶然の幸せを

何気ないことひとつだって

忘れないように小さく紙に書き残している


そうして、また1枚ずつ重なっていく


いつ読み返すとも知れないこの散文を

破って捨ててしまわないように。


—付箋—

未だ駄目だって、決めつけて

溢れそうになる言葉や感情を

これまで何度、押し込めてきたんだろう


栓さえしてれば隠し通せると

どうしてそう思えたんだろう


こんなに透明な瓶の中にあって

これこそ、僕の世界そのものだって知っていたら

もっと綺麗に生きてみせたのに


僕が嫌いになった僕の世界を

君は、綺麗だと言う


そんなわけはないと否定して

どこまでも突き放すつもりだった


でも、もう遅かったんだ。


—瓶—

photographer : yuduki

camera : canon kissX8i

あんなに美味しかったコーヒーの味を

すぐにすっかり忘れてしまうことが、なんだか悲しい


また行けばいいと開き直って

無くなったときのことなんか、万にひとつくらい


懐かしいなんて思えてしまうのは

そんな傲慢さのせいだ


足りないものが、別の何かじゃ埋まらないこと

僕らはもう、嫌というほど分かってる


だからって、こんな我儘が続くこと

許されるわけないよね


ごめん。


「いま、君に会いたい」


— blur —

photographer : yuduki

camera : Konica C35

place : Tenmonkan,Kagoshima

あの日と同じように聴き違えた気がした

終わりのない桜並木を、君はなんて言ったっけ?


照れ隠ししたのか

笑い飛ばしたのか


シーンがひとり遊びして

言葉を上手く思い出せない


ひとつだけ覚えているのは

春が過ぎても幻にならなかったこと


君の声がする。

あの日、僕は恋に落ちたんだ。


—君の声がする。—

photographer : yuduki

camera : Xperia1 IV


川沿いの桜並木の下を

君と、春風を連れて

なるべくゆっくり歩いていく


君の横顔は、いつ見ても綺麗で

私の世界を、たったひとりで彩ってくれる


ああ。この時間がもっと続いていったらいいなあ


なんて口には出来なくて

その代わり聴き飽きるほど伝えた言葉を

いつも通り伝えておいた


「もう。好きだなあ、私のこと〜」


笑って誤魔化される度、あなたのことが好きだから仕方ないんだって

この苦しさに気づかれないように、思い切り抱きしめる


いまだけは。私の瞳なんて見て欲しくなかった


—瞳— illustration by Ashiro