寝起きじゃなくても、君はかわいい

僕の用事は、なるべく午前中に入れたくない

君との朝は、早出出勤と休日以外で

一緒にご飯を食べられる貴重な時間だから


前回、お休みしたときに

聴いていたこととは言え

それなりに大事なことを任されて

その話をするために

今朝の用事は、行かないといけなかった


直前まで悩んだけれど、寝る前にアラームは掛けていたし

もう鳴ってしまったから腹を決めた

朝が早過ぎると、僕はごはんを受け付けられない

ゴソゴソ準備をしていると、やっぱり起こしてしまう


寝言の代わりに、君が、ぼやくように言った

「おはようございます…。

 今日は、変な夢見ませんでした…」

「良かったね」

夢の中でまで、残った仕事をしようとするんだから

ワーカホリックだよなあと苦笑してしまう


さすが、枕を新しくしただけはあった

支度は済んでいたので、出るまで隣にいることにする


「寝起きの私が一番可愛いでしょぉ」

そう言って、両手を広げる

僕はそれに、素直に応える

「馬鹿だな。

 全部かわいいよ」

「ふふん。ありがとう」

もう一度、ハグをした

「じゃあ、行ってくるね」

「行ってらっしゃあーい」

布団から腕ごと両手を出して、僕に向かって振ってくれる

やや遠慮気味がちに、君に振り返した

「起きるころに電話するね」

そうは言ったものの、やっぱりちょっと淋しかった


隙間を縫って、LINEする

「起きたかー」

「おはようございます!」

一緒にスタンプが返ってきたので、すぐに電話を掛ける

メッセージはテンポよく返ってくるのに電話だけ出ない

スマホの集中モード設定を思い出した

しまった、その設定をしたのは、他でもない僕だ


致し方なく本来の電話を使う

秒で出た


「あのあと二度寝できなくて」

「えっ、ごめん」

「天井を見ながら、ぼーっとする時間も、

 私は大事だと思ってるので」

こういう気遣いが、君の優しさだよなあと思う

「まだねむねむなので、起こしてください」

物理的に起こせないのは、もどかしい


心の底から、どこでもドアが欲しくなった


伝えたいことを伝えておく

「作り置きのサラダは、冷蔵庫の一番下の段で、

 冷凍ごはんは、冷凍庫の右上だよ。

 あ、キャベツは野菜庫だからね」

「はぁい」

「あと、カーテン開けといてね」

「はぁい」

そうして君が、君の朝へと出掛けて行った。


—寝起きじゃなくても、君はかわいい—

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