run away with you

ふたりして、なんだか上手くいかなかった

仕事で遅くなった君に迎えを頼まれて

余計に早く会いたくなる


いつもより1本遅い電車で、改札を出てきた君は

荷物を持っていない方の手を僕に振ってくれたけど

「もういやだー」

そう言いながら、僕の隣を歩く

今夜も晩酌を決めることになった


「凡ミスばっかりで、

 何もかも上手くいかない気がする…」

そんなメッセージが来たのは、僅かな休憩の間だった

「とりあえず、それはここに置いていけ」

すこし強めの言葉で返して、落ちる気持ちを受け取っておく


そんな中、僕も凡ミスがあった

普段は絶対起きないことだった


僕の自己肯定感とか自信とか、自分で自分を支えられる何かは、

これまであまりに削られ過ぎて、欠片も残っているか分からない

せめて君の前では、胸を張れるひとでありたいと思うのに

情けなさばかりが募ってしまう

だから、ちょっとしたことで消えたくなる


弱い自分も、嫌だった


普段と違うコンビニに向かいながら、僕の懺悔もする

「もう、いやです」

君が言う

「そうだね、いやだね」

僕も言う

「もう、何もしたくないです。どこか行っちゃいたいです」

「そうだね、何もしたくなくなるね。どこまで行こうか?」


一緒に逃げてもいい


明確な行き先がひとつしかないのも

でも、それをいまは選ばないことも


ふたりとも、知っている


そんなことを話すうちに、目指すコンビニに辿り着いた

以前、君が大泣きした公園の近くだった

晩酌には、生ビールとクリームたっぷりのスイーツを買って

駐車場で、おもむろに語らう時間を再開する


「前ほど、消えたくはないんです。

 上手に消えられなかったときの方が怖くて」

「じゃあ、生きてくしかないね」


そう言いながら、どうして僕は生きたいか考えた

ひとつしかなくて、君もそれは知っている


話しもお酒もつまみも足りなくなって

レモンサワーと塩気のお菓子を買い足して

あの公園で続きに耽った


深夜1時半、蚊に耐えきれなくて家に帰ることにした


「私のこと、どうやってわくわくさせてくれるんですか」

まあまあ唐突だったように感じるのは

話の流れより、言葉を覚えているせいだ

「どこへだって連れて行くよ。

 僕がいままで見てきたものを見せたいし、

 君と見たいものだってたくさんある」

僕は、君とだから旅をしたい


「ここから見る景色、綺麗ですね」

途中で通る高台からは、

整理整頓された住宅地の街頭が並んでいる

「うん。僕もここは好きなんだよ」


帰ってふたりで眠って、ふたりで朝を迎えた

早く息がしたかった。


— run away with you —

A recollection with you

カフェ“ポエム” since 2010.11.27

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