ポテマカサラダ
お昼から買い出しに出たはずなのに
帰ってきたのは、なぜか夜も10時前になっていた
寄り道が多かったからだけでは
説明がつきそうもない
鮭を買うかどうか吟味し過ぎた
絶対そこだと苦笑いが漏れる
ああ、そろそろ仕事を終えた君が帰路に着く時間だ
お互いのペースでメッセージを送りあう
今日の君は、穏やかに終わるはずが
急な話でバタバタしてしまったと言う
ただ、お互いに実のある時間になったから
とても良かったのだと嬉しそうに話してくれた
夜ごはんは、メインの付けあわせに
マカロニサラダを食べたそうだ
「我が家のほどじゃないけど好きなやつです」
おお、そうな…
んっ…?
見間違いかと思って、もう一度見る
わ、が、や…??
どこをどう見ても、
「我が家」
と書いてあった
さらりと話は流れたけれど
あのサラダをふたりでつくったこと
あの味をそんな風に想ってくれていたこと
なんだか胸が熱くなる
家に居場所なんてなかったこと
落ち着かない場所だったこと
それが、ちゃんと過去になってくれたような
そんな気がした
口にしたあとで、君はハッとしたんだろうか?
そんなふうに君自身で思っていたこと
あんまり気になったから、寝る前に聴いてみた
「確かにそうでしたけど、いまは違います」
そう言い切ってから
「私と貴方です」
僕に優しくキスを落とす
もう十分だと想ったときに限って
君は鉛筆で何度も書き直した手紙みたいに
ひとことを刻んでいく
「愛してます」
僕のすべてがフリーズした
いま、何て言った…?
聴こえなかったと思ったのか
もう一度、口にされる
「愛してますよ。
伝えたいから言いました」
シーリングスタンプのように、消えない跡をつけていく
生きているから刻まれたと分かった
きっとこの記憶もまた開ける日が来る
この詩(うた)が、未来の僕らも守ってくれる
手紙になってくれますように。
—ポテマカサラダ—
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