You’re not a given.

「いまのドライヤーの風量が弱いんだよね」

そう言われて、新しいのを買うまでのあいだ

僕のを貸すことにした


僕の部屋は君だけが出入り自由だから

いつ取って行ってもいいようにしていたけれど

大体は僕がいて、

ただいまとおかえりとお疲れさまを交わして

ひと休みしてからのお風呂に入った

それからドライヤーをバトンみたいにリレーして

髪を乾かすのは、何だかくすぐったかった


今夜の、そんなひと休みでのこと


新しいドライヤーが届いたから

この時間も無くなってしまうんじゃないかって

思ったことをそのままボソリと零してしまった

「ちゃんといますよ」

何言ってるんですかとばかりに笑われてしまう


こんなに近くにいても、別々の部屋がある

一人の時間がお互いに必要な僕らにとって

それはとても大切なことで

同時に、ふたりであることの証明でもあった


「帰ったら毎日会えるって信じてますけど、

 当たり前にしたくないです」


会いたいひとには、会えるときにちゃんと会っておきたい

それは僕だって思うことだけれど、

隣に居る今そう思うなんて、こそばゆかった


君が居ることは、この世界じゃなんてことないことかもしれない

でも、僕らが隣あわせでいられるなんてのは、当たり前じゃない

僕だって、当たり前になんかしたくない

日常のすべてが僕にとっては

どんな小さなダイヤモンドより輝いていて

ただそれを言葉という形にしておきたい


いつかこれが本になったら、読んでくれたらいいなあって

自惚れてしまうそうになった。


— You’re not a given. —

A recollection with you

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