リガトーニグラタン

休日の僕らは、一緒にいるときもあれば

それぞれに過ごすこともある

お互いの世界の守り方は、大人として心得ている


今夜は、珍しく君の帰りが早かった

袋一杯に買いものしたと言う

駅まで迎えに行くその隙間で

致し方なくもすこしだけ凹む出来事を抱えてしまった


選ばなければいけないと言うなら、僕は迷わない

後悔にも夢のままにも、するつもりはない


いまじゃなかっただけだ


ベンチに君を見つけて声を掛ける

疲れていることは確かで、エコバッグは満杯だった

荷物持ちくらい、いくらでもやる


普段は別々の夜ごはんを、一緒にするか聴いてみる

答えは想像ついていた

けれど、帰り道の間にメニューが決まりきらなかった


この暑いのに、僕らはパスタグラタンを作ることにした

リガトーニなんて初めて使うけれど

君のお気に入りなので、茹で作業は任せることにする


細かく刻んだガーリック

薄く切った玉ねぎに一口大のじゃがいもを

オリーブオイルで軽く炒める


ホワイトソースは、フライパンに20gのバターを溶かして

テキトーに小麦粉と練って、テキトーに牛乳を溶かしていく


そんなテキトーホワイトソースを使って

具とチーズ入りのソーセージ、それからリガトーニも混ぜていく


耐熱容器に取り分けて卵を割り乗せて

パン粉とシュレッドチーズは、気持ちごと増量しておいた


これであとはオーブンに入れるだけ

180度で15分焼いてみたけど

ちょっと足りなくて、もう5分足した


パン粉にこんがり焼き目が付いている

うん。食べごろだ


ふたりで同じ食事を囲むことは、そう多くない

普段より食卓が輝いて見える

胃袋に入れるより先に、君のスマホに収まった


リガトーニは最高の茹で加減で、もちもちとしていて美味しい

さすが茹で上手だと、君を褒める

パスタグラタンにパスタがなければ何も始まらない

グラタンソースが僕の役目だったなら、役割分担は十分だろう


美味しいと言って食べる君を僕のスマホに収めたかったけれど

温かいうちに食べたくて、どうにか諦めをつける


見れば見るほど愛おしいし、お腹も一緒に満ちていく

幸せは、噛み締めてもいいんだと思った。


—リガトーニグラタン—

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