幸せの共犯者
不安という奴は、ひとつなくなっても
勝手にまた出てくる
キリがなくて嫌になる
ただ、気にし過ぎているだけかもしれない
それに、僕にとって嬉しいことは
僕だけがそうではいけないと思ってる
だから。どうするか、どうしたいかの結論は
自分一人では、しないようにしている
殊更に、二人でする何かについては。
約束通り、君を迎えにいく
晩酌を選ばなかったのは、最近飲み過ぎてると思ったからだろうと
深くは考えずにおいた
賞味期限が長いからと、予定をすり替えたケーキと焼きプリンは
冷蔵庫の中で、とても良い子で、僕らの帰りを待ってくれていた
アイスティーを添えて、いつものように語りあう
言葉を重ねあえる夜は、何にも代え難い
ひととおり語り合って、迷うことなくお風呂に直行する
梅雨なんておさらばしたような熱帯夜に
さっぱりせずにはいられなかった
髪を乾かしてから、君の隣に腰掛ける
そこで僕は初めてはっきり口にした
「最近、ちゃんと一人の時間取れてる?」
お互いを大切にする上でのルールみたいなものだから
律儀に守ろうとして、失敗して喧嘩になってしまった
もちろんあんな思い、二度目は望まない
「取れてないけど、貴方に会いたくなっちゃうんです」
思わず自分の目も、耳も疑ってしまった
すべてが杞憂だった
そのとき、どんな反応を返したか思い出せない
「私のこと、考えてくれてありがとう」
そんなのは、当たり前だ
僕はそれなりに意地悪いし我侭だと思うけど
そこを譲ったつもりはないし、これからも譲る気はない
君が君でいられるなら
僕が僕でいられるなら
お互いをちゃんと頼って、生きていけばいい
「私、悪い子ですか?」
「いいや」
「じゃあ、共犯ですね」
思わず布団を抜け出して、後世まで残してやろうと
素早くメモ帳に打ち込んで、すぐに布団に戻る
こんなことが唐突に、何度だって起きるんだから
君には、やっぱり敵わない
この夜、僕らは、幸せの共犯者になった。
—幸せの共犯者—
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