親愛

雨が降って、星も月もない夜だった

代わりに揚げ物と餃子、日本酒とビールを並べて

いつもの食卓で晩酌をする

なんかおじさんみたいだねって、ふたりで馬鹿笑いした


どんなことを語らうときも、だいたい僕らは向かい合っている

今夜の議題は、君の好きな歌について

誰のと言うわけにはいかないけれど

その歌詞は、深く刺さったのだと言う


自分事として考えてみる


この歌を初めて聴いた君が、どう生きていて

何を思って、どこに心動かされて

それもまた、言葉を交わしながら、答えあわせをしていった


「 “親愛”ってしっくり来ませんか?」


確かに、僕らにお似合いだと素直に思う

僕は毎日、君に手紙のように詩を書いて

君は僕には想像もつかない言葉を、予想もできない瞬間に返してくれる


だから、これだって。


「貴方のことが、大切になっちゃったんです。」


そう言葉にした君の表情は

あまりに切実で、苦しそうで、

悔やんで戒めて、

矛盾しそうな何かを、謝ってしまいたいような

ただ、ありがとうって感謝するのも違うような


だけど、僕を好きだと言うことは

痛みさえあるくらい本当の感情なんだと知った

そしてその瞬間、

僕の中でずっと引っ掛かっていた何かが、音もなく外れた

何か失くしたのかと思って狼狽えた


違った


ようやく手にしたのだと気づいたとき

君を好きになって、愛していることの意味を理解できた気がした。


—親愛—

A recollection with you

カフェ“ポエム” since 2010.11.27

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