my dearest

「明日、珈琲と紅茶、どっち持って行きたい?」


って、昨日一緒に出たときに聴いてみた

当然聴いてみただけで、元から答えは一択だったけど


と言うのも、今朝は君が早出の日だから

いまのうちにと、風呂を済ませて

アラームをセットしておく


いままで、ひとりで頑張って起きてきたんだろうし

お節介極まりないのかもしれないけれど

こんなふうに起こすことさえ、僕は大切に思っている


読書に集中し過ぎていたのかもしれない

ノックなしに部屋のドアが開いて、

椅子の上に体育座りをしていた僕は、思わず飛んで驚いた


気づいてない、よな…と

ハラハラしながらも気を取り直して

「おかえり」と「ただいま」を交わす


座ったままの僕とハグをする

今日も頑張ったねって、お互いを讃えあって

もちろん口にもするけど、そうしたかった


明日の予定を確認してから、ふたりで、眠る支度をする

いつもよりキスが甘くて、なんだか大人って感じがした


眠れないって言われて、読み聞かせを敢行する

上手く読めている自信は、正直全くない

元放送部の名が泣くかもしれないけれど

僕の声だって、睡眠導入くらいにはなれるだろう


18ページくらい読んだころ、呼吸が落ち着いてきた

栞を挟んでから布団に入る

寝惚けるくらいにはなってくれたようで、安心する

アラーム前に起きられる特殊能力を持ってて良かったなあ

と自分に感心したときには、僕も眠っていた


午前5時半の1時間前、無事に目が覚める

いくらなんでも早過ぎだろ…

寝顔を眺めついでに頭を撫でてから、もう一回寝た


ひとつ目のアラームがひっそり鳴る

これで、僕は十分起きられる

相変わらず僕の膝の上には、君の頭があって

むにゃむにゃタイムは、どうあってもかわいい


「本当に起きられるんですね、すごいです」

と、最早どこへ飛んでいくか分からない言葉を受け取った


ふたつ目のアラームは

僕のささやかなやつと君が好きな音楽の共演になる


起き抜けに水を飲ませようとしたら

眠過ぎて水筒の蓋すら開けられないと言うので

開けてから渡し直す

素直に飲んで、ようやく起きられたようだった


それぞれの支度をパタパタしながら

朝食用の夏紅茶と、君に持たせる “ 初恋 ” を用意する


珈琲は、目の前で淹れると決めている

君の視線を感じる

お湯を注ぐドリップポットは、ブレない

ボトルに移し替えながら

そういえば、持たせるの初めてだなあって

ちょっとだけ物想いに耽った


出る時間が迫って、バタバタと支度を再開する

欲だとは思いつつ、駅までは送ることにしていた


ギリ線を攻めることになって

仕方なく駅までの道を急いだ

途端君が走り出すから、僕も背中を追い掛ける

楽しそうに笑ってて、なんだか青春だった


電車には間に合った


朝ボケのせいか、改札前で大きく手を振って

「いってらっしゃい」と見送る

僕よりは控えめの「いってきます」が返ってくる


僕に背を向けたら、もうこちらを振り返ることはない

それが覚悟みたいに見えて、格好良いと思った。


— my dearest —

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