brunch

僕らの朝は、それほど早くない

起き抜けに、一杯の水を飲むところから始まる


それから別々にルーティンをして

済んだ方から、ご飯の支度をする


実のところ、朝食と言うには遅くて

昼食と言うには早い、この絶妙な時間には

“ ブランチ ” なんていう、お洒落な名前がついている


素敵な感覚(なまえ)だと思う


キッチンにふたりで並んだのは

記憶の限り、今日が初めてのような気がして

くすぐったかったことは

何となく言わないでおいた


いそいそと食卓を彩っていく


決まりきった僕と、いつもすこしずつ違う君

何が並ぶか分からないのは、ちょっと楽しい


モーニングコーヒーは、“ 初恋 ” にした


休日は、ダラダラしたいからそれどころじゃないし

毎日飲むには、特別過ぎる

何気ない、この時間を大事にしてるって伝えるには

これくらいのペースで、丁度いいんじゃないかって


君は、珈琲を淹れる僕を見るのが好きらしい

気恥ずかしさがないわけではないけど、悪くない


途中、掛けていたBGMを広告に邪魔されて

若干、口が悪くなってしまった僕に

「それも貴方なんですね」って言って微笑む


マグカップに分けて淹れて、ふたりで飲んだ

美味しいってことは、君の全部が教えてくれるから

僕のこころは自然と切なくなっていく


甘いお菓子があればなあって思ったけど

でも昨日、食べたよなあって思い出す


最近の食卓は、未来の話で溢れている

その度に、こんな僕を望んでくれるからには

生きてちゃんと幸せになるんだと

気付かれないように、こっそり意気込みしている


僕のせいで掛けてしまう不自由なんて、あってはならない


それぞれに皿洗いをする

一緒にしても問題ないけれど、理由は特にない


そこで、ふと視線を感じた


「ん、どした?」

答えはわかっているのに、つい出来心で聞いてしまう

「貴方を見てるんです」

そうだよな、と思いながら、無事に言葉を返し損ねた


僕も君を見ているし、それはとっくにバレている

どんな気持ちでいるか、隠す必要はどこにもない


ひと通り片付けて、キッチンと食卓を拭いたら

きっとまだ慣れない一言を交わす


僕は、幸せ者だ。


僕らは日々、色々なものを送りあっている

それが何であっても

どれも確かに大事にしてるって、分かる


僕とは違う君のことを、愛おしく想ってる。


— brunch—

A recollection with you

カフェ“ポエム” since 2010.11.27

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