君と綴る詩物語 — uta mono gatari —
「愛してる」って、口にするより先にキスをした
めっ、って、くすぐったそうな顔をする
呑んで熱(ほて)ったはずの頬は、月よりずっと白くて
光に照らされているだけじゃない気がしたんだ
もしもの世界を考えた
傍目の話ばかりが重なっていたら
連絡しようと思わなかったら
喉を震わせていたことを知らなかったら
光を浴びたことがなかったら
もう、君の声は、言葉は、ここにはなかったかもしれない
僕は、末恐ろしかった
苦しくなった
吐いたって、おかしくはなかった
気がつけば、君を好きだと言っていた
みっともない自分を
置いてきぼりにして
呆気に取られていたかもしれない
いま、ここで言うか?って
知りもしない、初めて入ったイタリアンで
丁寧に、手紙に綴るような言葉を聴いて
幼気(いたいけ)に笑ったあとで
真っ直ぐに見つめられる
素直に、嬉しかった。
— 君と綴る詩物語 — uta mono gatari —
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