sincerely
夜、二杯の紅茶を丁寧に淹れた
机を挟んだ向こう側で
書き付けるように言葉を選んでは
ティースプーン1杯分の感情を乗せている
それは、隠しごとの得意な君が、
僕にだけ宛てた手紙を書いているみたいで
仕方ないと思う
僕も通ってきた道だから
ただ、その辛さを抱えたままでいて欲しくなかった
いまの僕にできることは
降り続ける雨に傘を差して
頼りない言葉を並べ立てて
一緒に止むのを待つことくらいだと
それ自体は、決して間違ってなかったけれど
君を本当に目の前にしたとき
瞬きなんて、すっかり忘れていたんだ
必死になって取り戻そうとした僕は
君の真っ直ぐなこころに、勝手に救われている
でも、救ったり救われたりするだけの物語なんか
誰も求めてない
「一人であって、独りでないこと」
僕だって未だ至らないことだらけだけど
大人になるには必要なことに違いなかった
君が生きていく世界を大事したい
優しい嘘が得意な僕の、精一杯の現実(ほんとう)だった。
— sincerely —
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