面影
どうしてそうしたのか、いまもよく分からない
期待することなんて何もないのに
気付いたときには、扉が大きく呼吸していた
波を打って、凪いでいく
遠くから声がした
振り返らずに応える
その面影は軽薄に白んで、透明になっていく
たったひとつの、深い藍を残して
幸せだと認めさせたかった
事実かどうかなんて、この際どうでもいい
口にして仕舞えば、それが事実だ
大事なものも失ったものも、あの頃と何も変わってない
全部なかったことにしよう
おしまい。それでいい
もう一度、呼吸(いき)をした
言葉には、ならなかった。
ー面影ー
0コメント