窓際で 編ーその5ー

お店の中では、オルゴールにアレンジされた曲が流れている。この雰囲気は、詩歩も好きらしい。ふと思いながら、僕は目の前に座る未夜さんと話している。

「気になる?」
「まあ、ウチの店員のことですし」
「ふーん」
「何ですか?」

あえて聴いてみる。

「ゆづくんがここに来るときは、大概何か悩んでるか、考えてるかのどっちかだからね」
「いや、今日は違いますよ」

案の定驚かれた。いつもは鋭い鼻も、今回は匂わなかったらしい。

「じゃあ、何?」
「頼みたいことがあるんですよ」
「へぇ~」
「インテリアのプロである、未夜さんに」

目付きがはっきりと変わって、緊張感に包まれる。

「模様替えの依頼です。それにあたって、1度お店に来ていただ…」

僕が言い終わる前に、

「嫌だって言ったら?」
「それでも、会いにここに来ますよ」

僕は、そう言った。すると、この空間の緊張が、ふっつり切れた。

「ははは、言うわけないでしょ。あなたと私の仲なんだから」
「ありがとうございます」
「ほんっとに、律儀だよね。電話で良いのに、こんなところまで来るなんて」
「変なのは、もちろん認めますよ」

ひとしきり笑われたころ、詩歩がこちらに戻ってきた。

「祐月さん、選びましたよ♪」

A recollection with you

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