窓際で 編―その4―
お店に入ってすぐ、詩歩の目は輝いた。
瞬間移動ばりの速さで、あちこちと、上から下へ見て回っている。
「ちょっ…」
僕が言い始めたかくらいのときに、2階に続く階段から店主が顔を覗かせた。
「あ~、今日だったっけ?ゆづくんが来るの」
「忘れないでくださいよー。今日見に行きますって、ちゃんとメールしましたから」
いつの間に、といった顔の詩歩に、確認し始める店主。
「ははは、ホントだ」
「ほら。まあ、お店閉めてなかっただけ、良いとしますけど」
そろそろ疑問に答えないといけなかった。
「ああ、詩歩。こちら、雑貨屋ローズマリーの店主、神崎未夜さん」
「初めまして。その子が詩歩ちゃんね?」
「あ、はい。詩歩です」
少し焦ったように言ったのは、さっきの目の輝きぶりを見られたからだろう。
「今日は、何だったっけ?」
「…それもメールに書きましたよ」
「あー…。店に置く雑貨をウチで選ぶ、だっけ」
「ちゃんと覚えてるじゃないですか」
そこまでしか覚えてないあたり、未夜さんらしい。
「詳しくは、カーテンとテーブルクロスです。僕が選ぶと、何故か高くつくんで」
「ふーん」
「まあ、詩歩が選んだものの方がお客にも好評なんで」
後ろで、にやけたのが分かる。
「ってわけで頼むよ、詩歩」
「はぁい!」
日傘も選んで良いからね。と付け加えてから、僕は未夜さんと向き直った。
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