窓際で 編 ―その3―
とても良い天気だ。
路面電車は、何度も止まる。振り返っては立ち止まるのと似ている。
窓の外を楽しそうに眺める詩歩。降りる駅が近づいて緊張しているのは、僕だけだろう。
「着いたよ、降りよう」
「はぁい」
市内でも西よりの駅で降りた。
歩こうにもすぐには歩けない、というのも…。
「あ、暑い…、日傘差さないと」
鞄を探るのに出てこないのは、たぶん、ないんだろうと思う。
「日焼け止めで我慢…」
「だめです~」
「ないものは仕方ないよ。行った先にたぶん、置いてあるからさ」
「ここですか?」
「うん、そうだよ」
目の前には、一軒の雑貨屋。
チリンチリン
僕らは店のドアを、開けた。
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