窓際で 編 ―その2― Yuduki side.
急に出掛けたくなった、というのは、嘘じゃない。
行きたいときに行っておかないといけない。そういう我が儘、だと思う。
路面電車が走っている街はいくつかあるけれど、やはり広島市が最初に思い浮かぶ。そこへ詩歩を連れていきたくなったのは、これまた我が儘だと思う。いつも一緒に居るっていうのは当たり前じゃないっていうことを、どこかで証明したかったのかもしれない。
「詩歩、着いたよ。起きろー」
「んんん…。おはようございます…」
「おはよう。そろそろ降りる準備しようか」
「はぁい…」
新幹線は時間通りに広島に着いた。
残暑で、暑い。
「あ、暑いです…」
「路面電車、すぐそこだか…」
言うより先に、目に見えた乗り場へと駆け出していった。
まったく、さっきの暑さはどこにいったんだ。
「祐月さん、はやくはやく!!」
「ははは。わかったわかった」
少し走って追いついて、これから先はゆっくりで良いことに気付いた。
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