窓際で 編 ―その1― Shiho side.

「詩歩。今日は出掛けよう」
「えっ」

何でもない平日。急に何を言い出すかと思ったら。

「お店はどうするんですか?」
「休みにするよ」
「どこに行くんですか…」

答えはわかってたけど、一応聴いてみる。

「…決めてない」

盛大にため息を吐いた。ただ、祐月さんの頬っぺた叩かなかったあたしのことは、褒めてほしい。



ひさしぶりの新幹線。
たしか、修学旅行…じゃなくて、ここに来たとき以来だった。お昼ごはんを、ふたりで準備したのは、初めてで嬉しかったなあ。なんて思いを巡らせていたところに。

「どうしたんだい?」

そう言いながら、頬っぺたを突かれた。
むうっと頬を膨らませたら、やっぱり面白いらしくて、笑われる。平気でこういうことするの、どうしてなのかな。

「なにもないですー」
「ふーん」
「それで、どこ行くんですか?」
「路面電車が走ってる街だよ」

そう言って笑ったから、きっと良い旅になるんだろうと思った。

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