僕の寝坊と鶏もものグラタン
「明日は、早出の日だよね。
職場までがアレで、家出るまでに1時間半だから…」
素早くざっくり計算して
「明日は、7時起きだね!」
言葉尻に星マークがつくような言い方になる
「電車の時間、見といてね」
「わかりました」
言いながら、僕は6時起きかあと項垂れてしまう
これが前夜
いつでも見れるサブスクのドラマなんて、見るんじゃなかった
6時にアラームが鳴る
スヌーズする
6時10分に鳴る
止める
6時30分に鳴る
まだ大丈夫…
6時45分、ハッとした
7時に起きればいいのは君の方で、僕じゃない
歯磨きだけして、慌てて支度をする
今日のメニューがバレるのは、早々に諦めた
時短レシピも辞さない勢いで、頑張ってみることにした
慌てついでに君を起こして
「ごめん、寝坊した!」
「手伝いますよ」
「じゃあ、朝ごはんは任せた!」
と言っても、あくまで盛り付けのことで
フライパン業務は僕がやる
とろっとろ半熟目玉焼きなんて
いまの君には作れっこない
キッチンは瞬く間に材料まみれになっていく
今日のメインディッシュは、鶏もものグラタンだ
君が好きなペンネは、早茹で3分
メルティーキッスくらいにカットしたさつまいもも、3分
前日買ってきたほうれん草は、2分
お弁当サイズにカットした鶏ももを焼酎に漬けている間に
それぞれ茹でていく
フライパンの上半分で、オリーブオイルで刻みニンニク
フライパンの下半分で、スライスした玉ねぎをバターで炒める
合わせてから茹でたもの全部と鶏肉を入れて
その上に小麦粉を塗(まぶ)す
粉っぽさがなくなったら賞味期限間近の牛乳を全投入して
とろみが出るまで混ぜる
バターと小麦粉を練らないだけでも、相当の時短になった
ただ、予想外に作りすぎた
どうしようかと悩んでいると
「昼ごはんにしたら?」
君が言うので、そうすることにした
君が食卓に本格的に参戦して、朝ごはんの支度も始める
君の顔がいつもより引き締まって見えたのは
慌てふためく僕が、頼りなかったからかもしれない
脳内はフル回転で、朝ごはんを優先に仕上げていく
取り分けて先に食べてもらう
僕が一緒に食べることは叶いそうにない
1時間も寝坊して情けないなんて言う暇もなく
お弁当の仕上げに取り掛かる
なみなみ入れてチーズとパン粉を盛って
それ以外も詰めて、弁当袋に入れる
目の前に積み重なった2食分の洗いものに、げんなりしながら
やるしかないと気を引き締めている間に
君が出る時間になった
弁当を持たせて、玄関を開けてしっかり見送る
いつもよりたくさん振り返る君は可愛かった。
—僕の寝坊と鶏もものグラタン—
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