夏雲
夏、窓の向こうに浮かぶ雲を
自由でいいなあと眺めてしまうときがある
どれだけ変わっても自分は自分だって
そう言われてる気がする
突き放されてるような
認めてくれてるような
なんだか複雑怪奇な気持ちだけど
昨晩の君は、1時間半も早く僕の部屋をノックした
生活の部分を相当頑張って済ませたことは、想像に難くない
足が疲れたというので、ほぐしていると
ここのところ削られていた睡眠時間を取り戻すように
寝息を立てて寝始めた
僕も横になると、君は自分の温度をそっと分けてくれる
お陰で、とてもよく眠れる
起きるのは、当然僕の方が早い
君をむにゃむにゃワールドから引き戻すためには
10分のスヌーズを2回掛けないといけない
でないと、僕のルーティンが間に合わないし
朝食の始まりが遅れてしまうからだ
今日もギリギリを攻めようとする君を
なんとか起こして支度に向かわせる
残念ながら、僕の食卓遅刻は確定だった
忙しなく支度をして、ふたりで食卓を整えて
朝食を取りながら、明日以降の話をする
決して多くないふたりの時間は
1秒足りとも無駄にしたくない
話がまとまるかどうかより、
話すことそのものの方が大切だと思っている
忙しなかった分、余裕を持って片付けられた
変な電話こそあったけど、もうどうでも良かった
12時過ぎ、すこし早く玄関に向かう
出発定時まで、あと10分ほど
自室と廊下と洗面台をバタバタ駆け回る君を横目に
読書をするのが僕のルーティンだ
愛読書のタイトルは、言うまでもない
支度を済ませた君が自室を飛び出したところで、栞を挟んだ
外の日差しは夏本番の様相で、僕は日傘に君を入れる
雨の日の相合傘なら青春なのになあって思う
茹だる暑さに、身体を溶かしそうになりながら
どうにか駅に辿り着いた
いつも通りに君を見送る
僕も、僕の予定に向けて、炎天下を歩き出した。
—夏雲—
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