澪標 仲直り

「仲直りしよう」


いつもより早いアラームとスヌーズの間で

君が呟くように言った

たまには、喧嘩だってする

中身はどうあれ、ひとそれぞれだけど


「どうして欲しい?」

口をつぐんで考え始めた君を見て

思い直して、僕は言葉を替える

「いや…、違うなあ。どうしたい?」


そう聴くと、愛おしそうに僕を抱き締める

いつもより強く、君を抱き締め返してみた


許して欲しいって言われると、何も言えなくなってしまう

それはとても狡くて、独り善がりのように見えて

頭の良い子どもが編み出した

自分を守るための処世術なのかもしれないと思った


そういうときの君は決まって、

「私は悪い子ですか…?」と聴く

その言葉に、僕は何も返さない


腹が立つことがないと言ったら嘘になる

でも僕は、事が起きる前からすべてを赦している

だから、いつだって君は良い子だ

叱らないことは、イコール無関心ではないけれど

反省には、最も効果的な方法に違いなかった


この世界は、送ることと受けることの積み重ねだ

ひとはそうして、“ひと”になる

だから、渡してばかりでも貰ってばっかりでも

どちらにしても居た堪れない

君の言う“バランス”が大切になるはずだ


そう思っているから、僕は君に、こうお願いした


「僕を守って欲しい。君に出来る方法で」

「守る、ですか…」


またしても、考え出してしまった君を見て

すこしだけ、言葉を足した


「僕は、僕に出来る方法で君を守るよ。

 朝ちゃんと起こす、とか

 君が寂しくないようにサラダ作っておく、とかね」


深く考え過ぎないで欲しい

そういう意味で言ってみたけど、伝わっただろうか


ひとりにできることは、それなりだ

けれど僕と君は、ふたりになった

だから、この行間は、僕らだけが分かればいいなんて

随分と横暴なことを思ったところで


「そうですね」って、君は微笑んだ。


— 澪標 仲直り —

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