澪標 僕のささやかな夢の続き編

今朝の僕は、5時半起きになった


寝たのは、多分2時くらい

昨晩の僕は、弱音を吐かずにはいられなくて

君の前で久しぶりに泣いてしまった

「貴方は、大丈夫です」

そう言って頭を撫でていたはずの

君が先に眠ってしまったけれど


アラーム通り目を覚まして、せっせと支度する

なんのって、君に持たせるお弁当のこと

君を起こすまでの1時間

物音をさせないように気をつける


昨日、決めたメニューはこちら

・ご飯

・自家製ポテマカサラダ

・たこさんウィンナー

・出汁巻き卵

(注:僕は巻けないから、正確には、出汁入り卵)


それからひた隠しにしたメインディッシュ

・ささみチーズカツ


彩り豊かなのに野菜があまりないことに

一抹の不満はあった

けれど、ご愛嬌ってことで許してもらおうと思う


カツがバレては面白くないから

オイルポットを何ごともなかったように冷蔵庫に戻す

出汁巻き卵も、原型が格好つかないから

これも証拠隠滅しておいた

あとで、こっそり食べておこうと思う

弁当箱のワクワクは、これできっと守られたはずだ


6時半、君を起こしに行くと

珍しく起きてはいたけど

いつも通りのアディショナルタイムだった

ただ、昨日の僕を気遣ってか

「大丈夫ですか」と聴いてくれた

「大丈夫だよ」と応えて、キスをした


15分後、部屋をもう一度覗くと

まだベッドの上だった

キスで起きないなら仕方ないとばかりに

布団をひっぺがして身体を支えるように起こす

でも、すぐに倒れる

君の努力に期待することにして

朝ごはんの準備に戻る


自室に入った君は、食卓が大体整ったころ

普段通りの身支度をして出て来た

家を出る時間がかなり迫っていて

あまりやりたくないけど、せっつく

「片付けは任せろ」

「お願いします」

こういう遠慮は、ない方が気持ちいい


せっついておきながら、すこしだけ話もする

「僕は“大丈夫”に理由をつけるけどさ

 君みたいに、理由のない大丈夫もいいね」

「“君の大丈夫になりたい”ってやつですよ」

この言葉に、大きな意味も責任感も加えることはできない

そうわかった上での、安心感は、君じゃなきゃつくれない


食べ終わってすぐに、君は身支度の続きをする

その間に僕は顔を洗って、皿洗いをする


お弁当をつくった達成感もひとしおだったけど

普段通りの朝がここにあることも、同じくらい愛しい


なんとか時間に間に合わせて

部屋から顔を覗かせて

「行ってきます!」

洗いものの手を止めて、玄関まで見送る

「忘れものないかい?」

「ないです!ちゃんとお弁当も水筒も持ちました!」

水筒はまだしも、お弁当は忘れられるのは、さすがに傷つく

「行ってらっしゃい!」

手を振って姿見えなくなるまでは玄関前にいる

君は今日も、2回こちらを振り返って、同じだけ手を振った


てっきり駅まで走らないといけないと思っていたら

僕の早とちりで、歩いても間に合ったのだそうだ


「余裕持って出れて良かったです」


そりゃ、念入りに逆算してるからね…と思いながら

今日の君が無事に過ごせるように願った


お弁当の感想も待ってるよと、心の中だけで言葉にしながら。


—澪標 僕のささやかな夢の続き編—

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