気づかないうちに

昨晩、君の帰りはとてつもなく遅かった

仕事で何かあったのかと思ったら

それはそうだったけど

僕にメッセージを送ったあと

本読みに耽って、電車を降り過ごした

急いで時刻表を思い出して、送ったあとで

確認したら記憶違いだったから、急いで訂正して送った

お節介しなくたって、君は調べたろうけど


そのころの僕は、常備菜のポテマカサラダを作りながら

またしても難題、今夜のごはんどうしよう問題に直面していた

自分のためのご飯には、どうにもやる気が出ない

食べなければ空くお腹を

満たすために仕方なく食べていると言っても過言ではない


そんな最中だった


日付が変わるギリギリで帰ってきた君は

疲れのわりに晴れた顔をしていて、

良い仕事をしてきたんだろうと思った


僕にも、良い知らせがあった

ポストインされた封書は

僕が見たとき偶然重なった休憩時間に、速攻で君に送って

お互いの涙腺を揺らすには、十分なことだった

16年の詩人生活は、意外な形で報われることになりそうだ


僕らの未来は、手を翳してしまいそうなくらいの

眩しさと温もりに満ちていっている


ふたりで改めて見て、すごいねと讃えあう

今夜は、間違いなく快眠だ


そう、快眠だった


一度目が覚めたことは、覚えている

早いなあと布団に戻ったことも、覚えている


次に目が覚めたとき、肝が冷えた


アラームを無意識に止めていた上で、

普段の起床時間を30分以上も過ぎていたからだ


君に時間を告げる


その瞬間、いつものスロー起床が嘘みたいに

ガバっ!と起きたから、本当は笑い飛ばしたかったけど

そんな場合じゃないと必死で支度をする

それから、叩き起こすことになった自分を猛省する


ご飯をいつもの倍の速さで用意して

いつもの2/3になってしまったブランチを過ごす

普段通りの会話で取り繕って、ゴミ捨ても皿洗いもする

これでも、君の時間を奪ってしまった

罪滅ぼしにもならないだろう


僕が抱えたものは、僕だけのものだなんて

君の抱えたものは、君だけのものだなんて

そういうのは傲慢だと思う

半分にもできなくたって、すこし引けるだけだって

ちょっと分けられただけだって

全部が全部じゃなくたっていいじゃないかって


なんとか間に合わせて、一緒に家を出る

昨晩の大雨と曇り空で、涼しい朝だった


どうしてか分からない

ひどく寂しかった。


—気づかないうちに—

A recollection with you

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