澪標 すこし先の未来編

これから書くのは、すこし先の未来のお話


僕は毎朝、午前七時に起きる

君が起きたとき、寂しくないように

気に入ってくれたマカロニサラダを作り置きして

冷蔵庫に入れておく

米を三合研いでセットしておく

小分けにするのは任せればいいだろう

専用のポットに、君の世界で一番美味しいコーヒーを淹れておく

ついでに、自分のも淹れる

僕よりあとに起きてきた君は

炊き立てのご飯とサラダと何かを食べて

おいしいコーヒーで一日穏やかに過ごしてくれるはずだ


布団の中でむにゃむにゃしている君に

「行ってきます」を言って、陽の当たる場所へ出る


ずっと夢だった旅の仕事に向かう

鉄道好きに通勤は苦行にもならない

諦めなくて本当に良かった

僕の旅は、誰かの旅に澪標を立てる仕事だ


それは僕が以前、君からもらったもので

いまの僕があるのは、いつも隣にいてくれる君のお陰だ


まだ知らない誰かと物語を書く

そのために今日も宝探しに行く

ひとと想いと現在(いま)と此処(ここ)をひとつに繋いで

そうやってできた物語は、叶えた夢の形そのものになる


お互いに仕事をこなす

僕の方が早いから、いつも通り夕飯も別々に取る

それを寂しいとは思わない

君が帰って来たら

「ただいま」と「おかえり」と「今日もお疲れさま」で

お互いの一日を讃えあって

余裕があれば語り合って

休みの前の日には、お酒とおつまみも用意して

それぞれのことをして眠りに就く


僕は出張もそれなりで、家に帰れない日がある

そんなときは、どれだけ離れてても

そこにいるような雰囲気で、言葉も声も重ねるよ

偶然、次の日が休みなら

僕までの切符を送りつけて

君と一緒に旅をして、美味しい地物を食べて帰ろうね


僕が見てきた素敵な景色を君に見せたい

行きたい場所も、やりたいことも山のようにある

それこそ、東京タワーのテッペンなんて軽く超えるくらいある

ひとつ叶えたって、またひとつ出てくるから

スカイツリー越えだって、夢じゃない


現実になるから、書いている

夢だなんて、僕にも言わせない


ある夜、眠りに就く前に、君が不意に言った


「私に似合う人になってください」


僕には勿体ないんじゃないかってくらい

綺麗な君にお願いされちゃ、そうならない選択肢なんて存在しない


早く君に追いつきたい

隣に立って恥ずかしくないひとでありたい

僕の旅を、隣でずっと見て居て欲しい


僕が生きていくには、これ以上ない理由だった。


—澪標 すこし先の未来編—

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