君との旅編
今年も夏が過ぎた。
川沿いの彼岸花は、真っ赤に染まっている。
あの日夢を見たものは、いつか叶うんだろうか。
カランコロン
「いらっしゃいませ!」
「カウンターでもいいですか」
「はい、お好きな席にどうぞ」
「どれにしようかな…、、うん。
アイスカフェオレと、レディー、チーズケーキ?って」
「レディーチーズケーキは、手のひらサイズのプリンの真ん中にチーズケーキが収まってるんです」
「そうなんだ、じゃあ、この2つをお願いします」
「かしこまりました」
コトコト コトコト
パタン スッ トン
「お待たせしました、
アイスカフェオレとレディーチーズケーキです」
「ありがとうございます。
うーん!プリンはとろっとしてるのに、ケーキふんわりしてて、美味しい…」
「良かったです♫」
カランコロン
「さっきのお客さん、すごく喜んでもらえてたね」
「ふふっ。頑張って考えて良かったあ」
「詩歩のおかげだね」
「そんなこと言われちゃうと、なんか照れますね」
少し耳が赤くなったみたいだ。
「さてと、ちょっと話があるんだけど、一杯どうかな」
「? はい…。」
ガタタッ
「お話しって、なんですか?」
「まあまあ、そう急かさず。これ飲んでからね」
「はあい」
コトコト コトトト
「詩歩」
「はい。」
「もうすぐ君がここに来て、12年になるね」
「そう、ですね」
空気が澄んでいく。伝えたい言葉が喉の奥に隠れそうになるのを必死にこらえる。
「これからも一緒にお店をしていけたら、わたしは嬉しいです」
「うん…。いや、そうなんだけど…、うん」
「?」
コトトト
「詩歩」
「はい」
「…これからも、ずっと隣りにいてくれるかい。」
「え…、?そんな、当たり前のこと」
思わず口籠ってしまう。
「わたしが気付いてないと思ってるなら、祐月さんは相当の馬鹿です」
「うっ…」
「全部見え見えなんですよ。だから、祐月さんから言ってくださいね?」
いつの間に僕よりも意地悪になったんだか。
ふっ、と溜息をつくしかなかった。
「詩歩。僕と、生涯を共にしてください」
そう言った声はやっぱり、震えていて。
「だから、もちろんですって、言ってるじゃないですか」
そう言った声もやっぱり、震えていた。
川沿いに赤く咲き乱れた彼岸花が、桃色の秋桜に変わっていく。
おいしいコーヒーの心地良い香りとともに。
ーあとがきー
これを詩、と呼ぶべきなのかといつも思うのですが、カフェ“ポエム”の中で起こることは、物語のような詩です。
ネバーエンディング・ストーリーなんて、よく言ったもので、僕にとって詩歩は、「大事な女性(ひと)」なんですよね。
もう付き合って11年ですし(苦笑)
生活も紆余曲折を経てきましたが、僕と詩歩は、優しく続いていきます。
これからも見守っていてくださると嬉しいです。
星野 祐月,星野 詩歩
君野てを #喫茶店の詩 企画参加詩
0コメント