春の薫り編
「詩歩。眠かったら寝てもいいよ」
「ううん、ね、眠かないもん」
「言い間違える程度には、眠いんだね」
「ううっ」
いつもの言い合いが、懐かしく思えるのは、何故だろう。そんなことを思っているうちに、カウベルが鳴る。
カランカラン
「いらっしゃいませ~♪」
『こんばんは。お店のなか変わったんですね』
「あたしが春色に染めちゃいました」
『相変わらず、思いきりが良い』
「褒め言葉として受けとりますね♪
こちらにどうぞ」
『ありがとう』
「今日は何にしますか?」
『そうですね、ブレンドを』
「分かりました。少しお待ちください」
コトコト
「お待たせしました。ブレンドです」
『いただきます。
…今日は温かったなあ』
「ええ。早いところは、開花したみたいですし」
『そうらしいね』
「それにまあ、詩歩のおかげで、お店も春色で感じざるを得ないところもあって」
『あはは、たしかに』
「今日はこのあとどちらに」
『散歩かな。せっかくの休みだし』
「フフ、良いですね。どうかお気をつけて」
『あはは、大袈裟だな』
風はもう、暖かい。
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