family

疲れのままに眠ってしまうと

君はとんでもない不機嫌で、色んなことを言い放つ

今夜もまた、始まってしまった


「ひとりで寝たいです!」


これまで何度も聞いた台詞で

理由は散々聞いてきたのに

まだ分からず屋だと思われているんだろうか


「そんなに言われると、僕なんて必要ないんじゃないかって

 思っちゃうから辛いよ」

「すみません」


怒っても叱ってもないことは、いつも上手く伝わらない

許されたいからと謝られるたび、遣る瀬なくなる


「お風呂、行くんでしょ」


時刻は、午前2時半を指している

昨日は、午前3時半だったから、さすがに寝るように促したけど

余計に嵐が吹いて大変だった


「行きます」

「じゃあ、準備しておいで」


湯を張って、ひととおり準備して待つ

なかなか来ないことに苛々してしまって

「何してたの…」

部屋のドアが開いた瞬間、責めるように言ってしまって

「これでも頑張ったんです。

 そんなふうに言わないでください」

「…ごめん」


ふたりで、お風呂に向かう

お酒が入った日は、なるべくそうするようにしている

疲れを労いながら落ち着いて話せるのは

もしかしたら、

リビングでの晩酌より風呂場での語りあいかもしれない


怒らないで聞いて欲しいんだけど、と前置いて

「僕らは付き合ってないから、恋人じゃない。

 君は僕を、家族扱いしてると思うんだ」

「はい。そうだと思います」


僕らが出会う前のこと

僕にとっても

君にとっても

家族という存在は煩わしかった

自分を大事にしてくれないひとたちだった


「私は、家族と離れてここに来ました」

「僕は、家族を過去に置いてきたよ」


ふたりで笑って言いあう


言葉は違えど、ここにはこれまでと違う関係がある

家族の意味も、ふたりだけのものであって

誰にも理解されなくていい


髪を乾かして、布団に入り直した

今夜も君は隣で寝息を立てている


それだけのことが愛おしかった。


—family—

A recollection with you

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